そして、大切なものを思い出した。
ロックスターとして名を馳せてきたリーと、その妻で歌手として成功することを夢見るエミリー(マギー・チャン)。彼らの間にはジェイという幼い息子がいたが、今はバンクーバーに住むリーの両親に育てられていた。所属するレコード会社の件で激しい口論をしてしまったある日、エミリーはドラッグの過剰摂取によりモーテルで死んでいるリーの姿を発見する。一部の友人とリーの母親は、事故を防げなかったエミリーを責めた。
6ヶ月後、エミリーはもう一度全てをやりなおそうと、かつて住んでいたことのあるパリへと向かった。「息子を取り戻すためにはなんでもする」。そう決意はしたものの、遠くへ逝ってしまった愛する人の残像、引き裂かれたプライド、捨てきれない歌手の夢…、様々な想いが交錯し、望んだ仕事を得ることも、息子と一緒に暮らすことも出来ずに、彼女はまた、ひとりになってしまった。また大切な人を失うかもしれない、昔の友人たちはもう助けてくれないかもしれない、夢は二度と叶わないかもしれない…。自分の人生を優先させてきた代償がエミリーを容赦なく襲う。
そんな中、義父のアルブレヒト(ニック・ノルティ)が息子のジェイを連れてロンドンのホテルに滞在しているという知らせを受けたエミリーは、何とか思いを伝え、たった2日だけ、息子とのデートを楽しむ機会を得る。バイクにまたがり動物園へ向かうエミリーとジェイ。しかし数年ぶりに再会したふたりは、距離が縮まった途端、思いがけず衝突してしまうのだった。「僕はママを愛してないし、愛されてもいないんだ」。
格好悪くてもいい。絶望から必死に這い上がり、もう一度「ふたり」のためにやりなおしたい…。これは、いつか息子と暮らせる日が来ると信じ続けた母と、幼いながらも母と向き合おうとした息子の、再生の物語。



